先日、お忙しい水木さんのツアー公演の合間を縫って、3回目の交換WS.。
水木さんの体力とパワーに頭が下がる。よくこんなスケジュールの間にWSまでやろうとするなぁ・・・。どこからそんなエネルギー、情熱、がでてくるのか・・・。
私の方が後輩なのだが、ついていくのが大変!反省して体力を付けねば・・・!!!!
二人で何も決めないゆる~い集まりを始めて3回目。
ほとんどまず、2人のオバサン女優の愚痴から始まる。(笑) これをやれるのは精神衛生上非常に良い!!!
だが3回目を迎え、少なくとも二人の・・・いや、私の?方向性は見えてきたような気がする。
俳優が演技する能力を数値にして、ワークショップなどの訓練で身に着けられる点数が50点として、演出家が「こいつOK」と思える点数が60点だったとする。
私は自分のWSの中で、もちろん俳優が60点になるように一生懸命やっているが、それは理想論。その現実の中で「必ず違いを作って終わる」ということを自分に戒めている。
ある人は60点に達した!スゴイ! でも、そうでない人も20点だった人を20点のままでは帰さない。1点でも進めて終わらせる!・・・と。
私は演出家・監督ではないので「演出」でその人を生かしてあげることは出来ない。その代わりに私のWSでは「演出家・監督の前に出るまでに俳優がやっておかなければならないこと」に特化して練習しているつもりだ。
もちろん、どのトレーナーさんも自分のポリシーの元、一生懸命レッスンしてらっしゃると思う。
だが、やはり、現場に出たときにすぐに結果を出せるものではない。
もちろん、自分の点数と60点の差を自覚して、それを埋めるために何をしなければならないか理解して身に着けていくのは俳優一人一人の自己責任だが、少しでもその差を埋めるべくトレーナーが前進できることは何か。
水木さんが初回に「やっぱり発表会までやらないと」とおっしゃった。
私ではその経験はさせてあげられない。
私には演出はできない。
もちろん、シーンを成立させることはできる。が、それは作品を作る「演出」ではない。
今回の交換WSでは・・・
前回まで多くは私がやって来たマイズナーテクニックなるものの感覚を使い「交流」を重視したセリフのやり取りを、水木さんに見てもらったり私と水木さんでやってみたりした。
今日はそれに、水木さんの演出が加わったらどうなるのか・・・を試した。
私と黒澤君で「マクベス」を。
もちろん、セリフを覚えているわけではないし、細かく本を読み込んでキャラクターを作っているわけではない、ただセリフを使って交流と目的を意識して読み合わせ・・・から始まって、水木さんの「なんでマクベス夫人は夫にダンカン殺しをさせたいか」「なんでマクベスはこの短い時間に、一旦やめようと思った殺戮を、奥さんに叱咤されたくらいでやることに変わったか」などの思索が始まる。
水木さんは『誤読』という手法をつかって、そのキャラクターの裏側、奥、を探っていって深みを与え、まさに演技を引き上げていってくれた。
これは交換WSなので、私も自分自身が演出を受けて自分の何がどう変わっていくか・・・を気にしながらやってみられた。
自分の中の変化はとても興味深かった。
また、自分ではわからない自分がたくさんいて、それを水木さんが遠慮なくピックアップする。
へぇ~そんなふうに見えてるのか・・・
え?それはいいところ、面白いところなんだ・・・気が付かなかった。
などなど。
自分が教えているWSでは、出来るだけ自分で自覚する部分を多くして、自分で俳優として作品に挑めるようにアプローチしていくが、所詮、自分で自分のことが全部わかるわけではない。
演出家にゆだねて、引き上げて、色を塗ってもらうことの、面白さ大切さ。
これを多く体験することもとても重要なのだ。
車の運転と同じ、身に着くまでやれば自分の手足のように車を運転することが出来る。
だから、現場にたくさん出られる人はがどんどん上手くなるのだな・・・と改めて思った。
黒澤くんが「技術はあるが統合できない・・・」
と言った。
どういう意味かと言うと、今の若手俳優たちは色々な方法論で学んで、例えばマイズナーテクニックならリピテションをやる。それを使って相手と交流はできるがいるまでたってもミザンス通りに動けない。それでは芝居は構築できない。
ほんとは両方できるはずで、やればいいのに・・・なんで?
ということ。
これでは何のために基礎を学んでいるのかわからない。
何度も言うが、自分が一人前の俳優になるために結果を出すのは俳優の自己責任だ。
だが、マイズナーであれルコックであれ、その基礎を現場に繋げていくのは「演出」を付けてもらってやってみることでしか学べないことはたくさんある。
それをしながら、その場面を演出家の要求通りに表現していくために「だからこの練習をやったんだ!これだよ!」とオンタイムで指摘する稽古はとても重要な有益な稽古なのだと思う。
いろいろな優れた演技論、練習方法があるが、それを身に着けたうえで
方法論に固執しない。
それが見に着けば、きっときっと芝居というフィールドでいかにみんなで楽しく遊べるに違いない!
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