最近参加者が少なく(愚痴かよ!笑、)来てくれた俳優さんとじっくりゆっくり向き合える。
先日のリピテションクラスに、長々来ている役者さんで「感情」が表現しづらいタイプの役者さんが久々に来てくれた。
じっくり対応でき、2歩も3歩も進めた気がして嬉しい!
その人は感情表現は抑えるタイプだが、いい役者で、目の奥に「悲しみ」とか湛えられる役者だ。
だが、言葉にしたときに嘘っぽくなり相手に伝わらない。
そんなもったいない人だった。
その人が思わず大声を出して、相手にすがるような稽古ができ、私としては「よっしゃー!」だった。
今日は久々に基本的なことをまとめてみようと思う。俳優さんたちが混乱しないように!
ちょっと今日は長文だ、ごめんよー!!
前回のブログで書いたが、
発声・活舌
身体の動き
感情表現(開いていること)
は、仕事の台本をもらってからやっても、遅い!!!! 無理!!!!
役をもらって本番までの稽古では、日頃の力を充分発揮することが大切だ。
言い換えれば、普段の実力以上は出ない!!!!
(例)
台本に「泣く」とト書きがある
練習で泣こうと頑張る
泣けない
演出家が「ここは役は家族から見捨てられて孤独感にさいなまれて一番辛い場面なんだよ!役者なら泣けて当たり前だろ!」とキツイダメ出し
役者あるあるだ。こんな状況は誰でも一度くらい経験があるだろう。
「日頃2オクターブしか出ない人が、いきなり舞台で3オクターブは出ない」
感情表現・インナーも、常日頃発声練習と同じように、日頃2オクターブしか出ない人が3オクターブ出るように基礎錬しなくてはならない。
本番の稽古が始まってから、いきなり「自分の孤独感」を探り始めでも遅いことがほとんどなのだ。
上記の例で、演出家に「おまえ、親と衝突したことくらいあるだろ」とか言われ、その時のことを思い出しても簡単に涙が出るものでもない。
挙句の果て、一生懸命に泣こうとし、やっと泣けたら今度は涙が止まらなくなって
「おまえの個人的な感情なんて必要ないんだよ!!!」
と怒鳴られる。
これは実際にあった話だ。(経験のある人も多々いらっしゃることと・・・苦笑)
映像などでは、個人的な感情であっても「ま、泣いてくれてれば編集で何とか出来るか」とか裏でディレクターがぼやく・・・みたいな。
この問題に関して、では、役者がどんな基礎稽古をしておけばいいか・・・
(感情の仕組み)
小さな男の子は、転んでひざをすり向いて「泣く」
お父さんとか、おじいちゃんとか、「男の子が泣いてたらおかしいぞー」とか言う
子供の脳は「泣いたらおかしいんだ」と学習する
次に我慢して泣かなかったら「偉いぞー」と褒められる
子供の脳は「これでいいんだ!認められてる!愛されている」とインプット
そして徐々に「泣く」という感情すら忘れ去って、オートマチックに「泣かない」男が出来上がる。
全ての人間は、大人になるいうことは多かれ少なかれ、どんな種類の感情かはひとそれぞれで、このようになっている。こうでないと大人としての社会生活はできない。
でも俳優はこれではマズイ!
いっちょ前の男性が「泣か」なくてはならないのだ。
台本をもらう、いきなり頑張って自分の悲しみをほじくり返して「泣こう」とする。
ところが、すでにオートマチックになって、自分の「泣く」という感情・衝動はどこにあるのか自分でもわからない。
必死に「泣こう」として、やっと泣けたら今度は溜まりに溜まった感情が止まらなくなってしまう。
で、「おまえの個人的な感情なんて・・・!」
これが上記にある現象の解説だ。
感情表現の俳優の基礎稽古とは、「感情」を出す習慣を取り戻しておくことだ。
ここのワークショップでは、様々なエクササイズを行って、色々な感情を感じでもらい、何かを感じたらそれを声に出して表現する練習を繰り返し行う。
そして、感情の種類も。
「えー!私もこんな風に感じるんだ」とかをたくさん見つけて、出す!こと。
俳優に与えられた方法は「声を出すこと」と「体を動かすこと」しかないのだから。
最初に書いた、「感情表現は抑えるタイプだが、いい役者で、目の奥に「悲しみ」とか湛えられる役者」さんは、日頃からあまり感情を出さない穏やかなタイプの人だ。だが、「目の奥に・・・」ということは「感情」が乏しいわけではなく豊かな感情を持っている人なのだ。
声にしても噓っぽくならないように、普段から「出す」練習をすることが必要なのだ。
この役者さんは、前々から来てくれている人だと書いた。
そう、この練習はそんなに簡単にできるものではない。
一回泣けたからもう千秋楽まで大丈夫・・・という都合のいいものではないのだ。
歌手の方々は、仕事の合間でも本番前でも発声練習をし続けているではないか。
この役者さんに、「目の奥で感情をたたえる」だけでなく「大声で叫ぶ」が加わったら、役者の幅を広げられる。
今までキャスティングされたのとはまた違う役も取れるかもしれない!!!
ワクワクする!
俳優の基礎訓練は、発声活舌と身体訓練だけではないと思っている。
自分の「感情」を取り扱えるようにしておくこと。
そうすれば、台本を読んだら自分の役の状況がまるで自分のことのように「感じ」られ、その感情を表現できる。
必要なのは「役」に共感した「感情」であって、役者の個人的な感情はいらない・・・というのはそういう意味だ。
演出家とかわされる言葉の中には、また、台本のト書きには、形容詞がたくさんある。
抽象的だ。
それをまさに具体化するのが俳優の仕事なのだ。
追記だが・・・
これを身に付けてくだされば、その俳優の本質が見えてくる。
「泣く」ことを忘れ、「俺は強い男」だった人が、「弱さ」「卑屈さ」なども表現できるようになるのだ。
今までとは違うキャラクターにキャスティングされることができるだろう。
また、
セリフのない、立っているだけの存在感
お客様に愛される魅力
そういうものも身について行っている。
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